派遣看護師とは?
派遣看護師とは、派遣会社から紹介された医療機関や施設などで働く看護師のことです。正社員の看護師と派遣看護師との違いは、雇用形態や雇用期間です。仕事内容はほとんど変わりありません。派遣看護師の働き方について知っておきましょう。
正社員看護師との雇用契約の違い
正社員看護師は、働く病院や施設と直接雇用契約を結びます。契約を結んだところの職員として働くことになります。給料は勤務先から支払われますし、社会保険などに関係する手続きも勤務先が行います。
派遣看護師は派遣会社と契約を結び、給料や社会保険などの手続きも派遣会社が行います。雇用契約を結んでから、働く場所(派遣先)の提案があります。
派遣看護師の3つの働き方
派遣看護師は、大きく分けて3つの働き方が存在します。雇用形態がそれぞれ違うため、どの働き方を選ぶかによって、働く場所も違います。希望する働き方があるのなら、それに合う雇用形態を選ぶようにしましょう。
登録型派遣
登録型派遣は、派遣会社に登録し、紹介されたところで働く形態です。条件が合えば雇用契約を結び、派遣期間が終われば雇用契約満了となります。長い期間のフルタイム契約から、単発や短期、時短勤務などの働き方ができるので、自分の都合に合わせて選ぶことができます。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、派遣先で半年以内に、正社員か契約社員といった直接雇用への切り替えを前提にした派遣の雇用形態です。いずれは正社員になりたいと考えている人におすすめです。
実際に半年間仕事をしてみて、自分に合っているかを判断してから、直接雇用契約をするかしないかを決められます。必ず半年以内に直接雇用契約をしなければならないというわけではありません。
常用型派遣
常用型派遣とは、病院などに派遣会社に雇用されている社員を派遣する形態です。この形態では、派遣契約期間が満了となっても、派遣会社間の雇用契約は継続していて、そのまままた新たな職場に派遣されます。すぐに次の派遣先が決まらなくても、派遣先が見つかるまで給料は支払われる点が、登録型派遣との違いです。
派遣看護師として働くのがおすすめの人
直接雇用で働くか、派遣雇用で働くかを決めるには、それぞれのメリット、デメリットを知り、自分はどちらに向いているかを考えることが大切です。派遣看護師として働くのに向いている人の特徴についてまとめます。
プライベートの時間を大切にしたい
正社員看護師の場合、仕事柄突発的な残業が起きやすく、プライベートの時間に影響することがあります。派遣看護師の場合、残業を強いられることはまずありません。
プライベートの時間を大事にしたい人、家事や育児の時間をしっかり確保したい、親の介護や通院に付き添う必要があるなど家庭の事情がある人、残業はちょっと厳しいという人は、派遣看護師が向いているでしょう。
様々な経験を積みたい
使う側からしても、派遣は人手が欲しい時に必要な期間だけ雇うことができるので、便利だとされています。また、働く側からしても「ここでは働き続けたくない」と思ったら更新しなくて良いですし、「もし良い仕事が他に見つかればそちらに行こう」など、柔軟に対応できます。
いろいろなところで様々な経験がしたいと考えている人なら、派遣の働き方が向いていると言えるでしょう。
副業として働きたい
本業があって、本業だけの収入ではちょっと物足りずに副業を考えている場合、派遣は向いています。派遣は短時間勤務や日雇いといった働き方ができますので、副業に向いているのです。
本業の勤務先で副業が禁止されている場合はできませんが、副業をOKとしているなら、派遣で働いてみることをおすすめします。副業で働くことで、本業以外の経験を積み、新たな知識やスキルを得られるでしょう。ただし、くれぐれも本業を疎かにしないでください。
派遣看護師のメリット8
派遣看護師のメリットは8つあります。そのメリットについて、1つずつ解説します。
時給が高い
派遣の場合は時給制となり、派遣看護師は時給2,000円前後が相場です。一般のアルバイトやパートと比較しても、派遣看護師はかなり高給と言えます。もし夜勤も行う契約であれば、夜勤手当がプラスされ、しっかり稼ぐことができます。
正職員の病院看護師と比べるとやや劣りますが、看護師以外の他の仕事と比べると良い時給です。年収で比べると、大差ないと言えるでしょう。
サービス残業がない
派遣の場合、「勤務時間は○時から○時まで」と決められた契約をしています。そのため、時間が来れば帰れることが多いです。ただし、多少の残業があることが契約時に伝えられており、それを承知で契約したのであれば、多少の残業はやむを得ないでしょう。
残業した場合は、もちろん超過勤務の手当が出ますので、そこは安心してください。どうしても残業できない理由があるのなら、その旨を契約時に伝え、そのような契約にしてもらうことも可能です。
長期研修がほぼない
派遣看護師は即戦力として採用されます。そのため、長期研修を受ける必要はありません。直接雇用されている看護師の場合は、いろいろな研修に参加しなければならないケースが多いですが、派遣看護師はたとえ派遣先が初めての場所でも、研修などを受けなくても良いケースがほとんどです。
しかし、学ぶという気持ちは常に持っておいた方が、後々の自身のキャリア形成に役立ちます。もし派遣でも研修や勉強会への参加をOKしてくれる職場であれば、どんどん参加した方がスキルアップできます。
研修がないということは、キャリアが浅い看護師だと不安に感じることも多々あるでしょう。周囲も派遣看護師=仕事ができると期待されがちですから、自身のスキル等を考えて勤務先を選ぶようにしましょう。
時間の融通が利きやすい
派遣看護師のメリットとしてよく挙げられるのが、時間の融通が利くことです。例えば日勤だけの勤務にするとか、夜勤専門で働くなど、自分の都合に合わせて働き方を選ぶことができます。
派遣元に自分の希望を伝えておけば、それに合った職場を紹介してもらえるので、入ってからトラブルになることはありません。○曜日は子どもの習い事に付き添わなければいけないので休みたいとか、月に○回は親の通院に付き添うので休みたいというような場合も調整できます。
派遣看護師は時給が高めに設定されていますので、ある程度の収入を得ながら自分のペースで仕事ができることはとても魅力があります。
勤務先以外に派遣会社という相談相手がいる
派遣看護師は派遣先で働きますが、身分は派遣会社の従業員になります。そのため、派遣先で何らかのトラブルが起こった場合、派遣会社に相談することができ、担当者が間に入ってサポートをしてくれます。
例えば、契約以外の仕事をして欲しいと言われたとか、残業なしで契約したのに残業してくれと言われたなど、働く上で困ったなという事態になった場合、すぐに相談できます。派遣会社によっては相談窓口を設置しており、相談しやすくなっています。
同じ職場に通い続ける必要がない
派遣看護師は何年も同じ職場に留まることがありません。ですから、職場内でのゴタゴタに巻き込まれません。もし、嫌だな、働きづらいなと思っても、派遣期間が終わればその職場はこれで終わりで、ストレスを抱えながら毎日通う必要は無くなります。派遣期間が終わればまた次の新しいところに変われるので、気分を入れ替えることができます。
人間関係のトラブルがおきにくい
派遣看護師の場合、その病院や施設の職員ではないので、「外部の人」として扱われます。どちらかというと、丁重に扱われるでしょう。そのため、職場の人間関係のトラブルに巻き込まれにくい点がメリットです。
職場の人とはある程度距離を置いた働き方になるため、人間関係のトラブルで悩むことは少ないです。しかし、派遣だからといって誰とも仲良くなれないことはなく、気の合う人とは仲良く付き合うことができます。
働くところが常に人間関係でゴタゴタしているようでは気分も滅入りますから、そういったトラブルに関わることがほとんどないと快適に働けるでしょう。
色々な経験ができる
派遣看護師の場合、短いスパンで働くことができるので、いろいろな分野の看護を学ぶことができます。様々な経験を積むことで自分のスキルアップにもなりますし、本当に自分のやりたい仕事は何かが見えてくるでしょう。いろんな現場で経験を積めば自信もつきますので、どこで働いても即戦力として頼りにされる存在となるでしょう。
働きたい期間を自分で指定できる
派遣の場合は、単発や2カ月だけ、半年間だけなどと、比較的短い期間で働くことができるので、少しの間だけ働いて稼ぐことができます。短期間の派遣を繰り返すことができるので、様々な職場を体験できます。同じところで長い間働くのに抵抗がある人にはおすすめです。
責任の伴う仕事は免除される
派遣看護師の仕事は、基本的に正社員看護師と同じです。しかし、難しい患者さんの担当や、責任の重い仕事を振られることは少ないです。派遣看護師は契約期間があり、人の入れ替わりが激しいため、何か過去のことでトラブルがあり、「あの時どんな対応をしたか」といった確認がしにくいからです。プレッシャーなく、楽な気持ちで働けるのもメリットです。
看護師派遣として働くデメリット 8
派遣看護師にはデメリットもあります。そのデメリットの内容をまとめます。
同じ職場で長く働くことができない
派遣看護師の場合は、契約期間が決まっています。長期でも3カ月から6カ月で、契約更新が可能であれば、更新して引き続き働くことになります。
しかし、派遣で働ける上限は3年間となっていますので、それ以上の更新はできません。もし、引き続き働きたいという場合は、派遣先と交渉して直接雇用してもらうことになります。
派遣でも「紹介予定派遣」であれば、半年以内に直接雇用に切り替わります。1つのところで長く働きたい人は、紹介予定派遣を利用すると良いでしょう。
キャリアアップが難しい
派遣の場合は派遣会社から派遣された人として働くので、派遣先でキャリアアップを目指すのは難しいです。契約時に決めた時給でずっと働くことになり、次の契約時までキャリアアップは望めません。
年齢と給与額が比例しない
派遣看護師の時給は比較的高額なので、若い頃は同年代の正職員の給与と変わりないか、少し多めの額をもらえることがあるのですが、年齢を重ねてくると正職員の給与の方が上になってきます。正職員はボーナスがあり、キャリアを重ねるごとに額も上がるからです。
派遣看護師はボーナスがありません。しかし、令和2年から「同一労働同一賃金」制度が導入されたため、正職員と派遣と大きく差が出ないように改善されつつあります。
業務範囲が限られる
派遣看護師は、長期になるであろう業務や、難しい患者さんの担当を任されることは基本的にありません。そのため、派遣先では正社員看護師のサポート的な業務になり、経験を積んでキャリアがある看護師であれば、仕事に物足りなさを感じることがあります。
派遣先の福利厚生は受けられない
派遣の場合、派遣先の福利厚生は受けられません。育児休暇や産休は権利であるために認められていますが、雇用期間が短い派遣では取りにくいのが現状です。しかし、条件さえ満たせば派遣会社の福利厚生を利用できます。登録の際に確認しましょう。
即戦力を求められる
正職員であれば入ったばかりの時は研修期間が設けられていますが、派遣看護師は入職時の研修等が省略されます。即戦力として求められているからです。
まだ経験が浅いのにハイレベルな内容を求められると厳しいので、登録時にできること、できないことをはっきり伝えるようにしましょう。
ローン等の審査に通りにくくなる可能性がある
ずっと派遣で働いていて、収入も結構ある人もいるでしょう。しかし、金融機関では派遣社員は「不安定な立場」と捉えられ、年収も正社員と同等に扱われないことが多く、ローン等に通りにくいと言われています。
職場のルールに慣れるのが大変
同じ仕事でも職場ごとにルールが微妙に違うため、慣れるまでが大変です。ローカルルールに戸惑い、やっと慣れた頃に雇用期間が終わるということもあります。